長沼町の伝説 -190/224page
藤沼神社の話 《下江花》
藤沼神社には、大蛇が祀られている。神社のある山の上に沼があって、藤の花が咲いているという。 藤沼様の話はこういうわけだ。
新潟と山形と福島の間に、飯豊山つう山があるんですよ。でっかい山がね。いつ見たって、三県こっ ちは山形、こっちは福島、こっちは新潟ね。ここの飯豊山つう山の奥地に、じいん様ていうものがいた そうだ。じいん様ちゃ犬だったんだね。
鉄砲打に飼われていた犬で、「じいんじいん にしはやがてでっかくなっと、この娘くれんだから子守 しろ」といって、この犬に子守させていた。そしたら娘が年頃になった。「おっかあはこういったべ、お れに育てあげたら年頃になったらくれるって」と言って、その犬は人間になった。
そして娘に、「いっしょに行くか、ふじ」と言ったら、その娘は、「そういう約束だから、いっしょに なる」といって、山奥さ引込んで、兎獲ったり、むじな獲ったりして暮していたんだって。そうしたら 宇都宮の日光の近くの村で、毎年祭りに鎮守様に人年貢あげねえと、たたりがあって因っていた。
村に六部が来て、「人年貢あげねえくてもいいようにするには、飯豊山の下に住んでいる。じいん太郎 を頼んでくればいいんだ。それを頼んでこ 大きなぽちだからと」と教えた。
村の人たちは、飯豊山の岩屋さ行って頼んだ。「こういうわけで、じいん様を頼みに来た。俺方の鎮守 様が、毎年毎年人年貢をこれまで十年も上げて、こんだまた娘を上げねばなんねいんだ。」