長沼町の伝説 -191/224page
「そんじいは、ここの古むじなが、おれと組んだんだが、とうとう何回組んでも逃しっちまったんだ。 向こうさ行って、悪い事してんだな。そういうものは征伐せんにゃなんねえ」と言って、村人の頼みを聴 いて、雲と霞に乗って人年貢あげんのに間に合った。じいん太郎が、人年貢を入れる桶さ娘の代りに入 っていったんだ。そしたらその大きなむじなが来たっつだな。
「じいん太郎はいねえか」とむじなはいったが、蓋を取るまで黙っていたんだと。蓋取ったらじいん様 は、「じいん太郎はここにいた」と言って、組打ちしたんだと。格闘の末、むじなを倒したが、じいん太郎 も死んだ。村人は、じいん太郎を神様に祀った。
飯豊山のおふじは、じいん様恋しくて、会津街道通って来たんだと。下江花っつ所まで来て病気にな って、そんじいあそこさ身隠したわけよ。雨嵐が来っと、じいん太郎が藤沼さ面会に来んだと。
じいん太郎が雨嵐に乗って、藤沼に面会に来っと、藤沼の水がたっぷりと溜るといってる。村の人は じいん様が来っと、強飯や餅をついて持って行って上げんだと。その餅がなくなんだとよ。
おふじってのは、きれいな女であったんだけど、神様になって蛇体になったんだとよ。あそこでは藤 の花は取らねえっうわけだ。じいん様が来っと、こけ(鱗)が、蛇のこけだよね。小っちゃなピカピカ光 るのを落して行くんだと。
水が干けると、「行がさった」といって、村の人たちは、「こけ」拾いに行くんだ。この「こけ」は高価な ものなんだ。子どもの虫病したときそれ一つ飲むとよくなるんだと。またいろいろの御利益があるんだ とよ。
(「猪苗代湖南三代の昔話」より)