長沼町の伝説 -193/224page
その家で子どもが病気にかかったり、やけどをしないように祈願する。毎年二月には村中の老若女衆が 地蔵様をかこみ、祈願祭を開く。この時は、村中が仕事を休んで、もちをついて食べる。
(話者 江連 栄)
宿なし觀音 《志茂》
昔、村の子どもに病名も分からない悪い病いが流行した。村人は、ただ神仏に祈願するより術なく、 木彫の子育觀音様を造り、祈願したところ、悪い病気が治った。
それ以来、子どもが病気になると、この觀音様を借りて行くようになったので、お堂にいることがな く、常に各家を廻り、子どもの成育をお守りした。そ れで、お堂がないので宿なし觀音と呼ぶようになった。 また一名廻り觀音とも呼ばれている。觀音様を箱形の 厨子に納めて、隣から隣へと順番に廻して、いつまで留 めていても良いので、永く宿して留めて置く家では一 、二ケ目以上にもなり、村内を一廻りするのに五、六 年かかるといわれる。この觀音様は子どもと良く遊ぶ ので、お姿が大変すりへっている。次の家にお送りす