長沼町の伝説 -202/224page

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 この山に天六郎という化物がいる。年経た化鳥ともいう。常に「泣く者喰いたい」と鳴く声が聞こえ、 この声を聞くと、泣いてる子どもも泣き止んだといわれる。それからというもの、今日に至るまで、子 どもが泣くと母や子守は、「泣くと天神山の天六郎に喰われっから泣くな」と言うと、子どもの泣声はぴ たりと止むという。

        (「長沼名義考」より)

散々(ちりちり)川の龍燈螢(千里千里川) 《長沼》

 町の中を流れる散々川は、川の両岸の木の葉が散って流れ込むので、散々川と呼ぶようになった。

 ここの龍燈蛍は四季にかかわらず、小雨降る夜、あるいは薄月夜の頃に水中より出る。それは直径八、 九寸位(二五センチ程)の火の玉でブラブラと現われ、川筋を幾度となく上がり下りし、ついにその火の 玉は砕けて、数千百の蛍となって、東西南北に飛び去るという。

 宝歴の頃、磐瀬茂貞という人が、ある冬の夜、本念寺の墓場で火の玉が墓の中を転び廻るのを見た。 その玉は、しだいに近寄って、茂貞の足元まで転がって来た。持っていた杖でその火の玉を打砕いたら 数千匹の蛍となって飛び去った。茂貞は、「冬の夜に蛍がいるのか、大馬鹿ものあとで化けろ」と言い捨 てて、家に帰ったという。

 龍燈の現象は、安積郡守屋妙見山、石城の赤井嶽など、その代表的なものだが、いずれも海中河中沢 間より出るもので、散々川の龍燈蛍は川筋を上り下りして、ついに砕けて飛び去るということを考えれ


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