長沼町の伝説 -208/224page

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祭礼・行事に関するもの

おいの祭 《勢至堂》

 馬は昔、農耕に交通に重要な役割を果たした。どこの村でも、馬の繁殖、生育は大きな仕事であった。

 勢至堂でも、沢山の馬を飼っていて、夏は山に放牧した。馬放し場は、大きな沢に囲まれ、二ケ所を 閉じるとどこにも逃げられず、広い山野を自由に駆け、秋には立派に育った。

 二ケ所には、「ませ」(柵を開閉する仕掛)を設けた。その場所は本坂橋の奥「ませ沢」と、「オカバミ沢」 だった。オカバミ沢は町水道の貯水ダムの辺で、日時は忘れたが、年一回、ここで「おいの祭」をした。 藁ツトッコにボタ餅を入れて上げた。「おいの」とはおいぬとも呼ばれ、狼または山犬のこせである。馬 を守るため、「おいの」に供物をして、供養したのである。

 「おみや」という婆様が、「オカバミ沢」に仕事に行ったら、耳の立っためんげい犬ッ子がいたので、じ ゃらかして遊んでいたら、向側の岩の上で地響立てて吠えるので驚き、一目散に逃げ帰った。

 その後、おみや婆様の家の馬が谷に落ちて死んでいた。この谷には、今まで馬が落ちたことはなかっ たので、狼に追い落されたのだといわれた。

 婆様の見た、めんげい犬ッ子は狼の子だったといわれる。

        (話者 柏木平蔵)


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