ふるさと昔話 - 007/056page

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高村の甚造兵衛の話

   第一話 馬よりも速く

  第二話 胡麻のハエの胡麻のハエ

  第三話 唐くわはいらない

  第四話 フロ汲み

  第五話 草角力

  第六話 赤いだてまき

 

   第一話 馬よりも速く


 高村の甚造兵衛という大変めずらしい百姓が住んでおりました。
 ある時、長沼のお城のお殿様が水戸の御本家に急用ができました。一日半日で水戸のお城までかけ走る馬と、それに乗る騎士はいないかと四方をさがしましたが誰れも見つかりませんでしたので大層困りました。

 この時ご家来の一人が「御領内の成田村字高村なる部落に甚造兵衛なる水のみ百姓が馬よりも速いと村人達が申しますが、この者なれば必ずや、この大役を果たすやも知れません」と申し上げましたところ、早速甚造兵衛はお城に呼び出されました。

 「この手紙は火急の用事なれば明後日のタ刻までに水戸のお城に届けてくれよ」
 「へえ、かしこまりました。お殿様御安心下さいませ。これから夜通しかけて明日の夜明までには必ず水戸のお殿様におとどけいたします」というと台所に行って三升飯を炊いてもらって、軽く一升飯を食べ、のこりのニ升飯を握り飯にして腰にさげ、お手紙を背負って水戸にむかって一目散にかけ出した。白河、棚倉、太子を経て夜明けの一番鶏の鳴く頃には水戸のお城の外堀の土手で背負ってきた握り飯を美味そうに食べながら城門の開くのを待っておりました。


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