ふるさと昔話 - 012/056page

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  もの知り庄屋の話

 ある村の庄屋様はもの知り庄屋といわれていました。しかし、いなか者なので失敗した話もたくさん残っています。

 ご陣屋からお役人が来た時、かたつむりを探してくれと頼まれたが、さっぱりわからない。「どんなものでござろうか」とたずねると、貝殻を背負って、湿ったところの木の下などに居ると申された。探しに出たところ、いた、いた、大きなホラの貝を背負った山伏が木の下で休んでいる。
 お役人さまの仰せだからと連れ戻って差し出すと、お役人さまが苦が笑い。実はわらじ履きで長道中したので足を痛め、でんでん虫を薬にしたいのだったが、この辺では"でえろ"といわないと通じない。

 また、夜はローソクをごちそうしてくれ、朝はちょうづを頼むといわれた。ごちそうしてくれといったんだからローソクは食う物だろう。須賀川なら売っているだろうと下男を走らせて買って来た。さて料理の方法だが、穴があいてるので串に刺して焼いたところとろけてしもう。煮てもさっぱり味がないのでアンかけにして出した。あかりに使うのを知らなかったんです。

 さて、朝の"ちょうづ"だが村中で一番頭の長いのは作どんだろう。
 作どんに話すとおどろいてガタガタ震えている。おらどごにも出だごどねえのにお役人の前なんて真っ平ご免だ。勘弁してくれ。
と頼むのを、お役人のお仰付けだからこのわしが困る、とムリヤリ連れて来て、これがわが村では一番の長頭でござる。と差し出
すと、お役人はあきれ顔。
実は洗面に使う桶(ちょうづ鉢)をほしいと頼んだったんだというお話です。

 


  お天道様と競争した話


 昔ある人がお天道様と競争したんだって。朝、日の出と一緒にヨーイドンで西に向って歩き出し、タ方陽が沈むまでどっちが早いか試したそうだ。途中で休んでは負けんので、握り飯を食いながら歩ったそうだが、夜になってショボショボ帰って来て「負けた」というんで聞いてみっと「お昼までは何とか頑張ったが、くたびれて「昼過ぎに越されてしまった」っていう話です。

 また、この人はお天道様まで行ってみでいと、食い物をいっぱい舟に措んで東に向って漕ぎ出したそうだ。毎日毎日漕いだが仲仲近づかない。何日経っても忘っせる程漕いで、やっと浅くなり、水がドロドロに変った。
 いよいよ近くなったかと漕ぎつづけるとヨシのような草の生えだ陸があり、おかしなけだものが近か寄って、


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