ふるさと昔話 - 014/056page

[検索] [目次] [PDF] [前][次]

「うんだなあ。そういわれりゃな」と武兵衛は孤にだまされたような気持になった。武兵衛は百姓熱心な人だけにがっかりしたらしい。
 その日はそれですんだが、二、三日あと、伝三郎どんの麦も弥平どんの家でも喰っちゃと騒ぎは大きくなった。村びとたちは寄合をもつことになった。どこの家でも馬一匹だって外に出さねいのに。と
 寄合の「きめ」で夜番をすることになった。ニ人一組で、今夜は与三郎と孫右ヱ門、宵のうちはさほどでなかったが、昼の疲れれがでたのか、「うと、うと」とした。

 明け方、「がさ、がさ」という音に眼をさました。とおくの方に白と黒のニ頭の馬がいるのではないか。
 息をころしながら近くに寄ると、馬は遠くに見える。明け方近く馬はお寺の森の方へゆくではないか。なおも二人は馬を追っかけてみると馬は観音堂の中へ消えた。
 まさか神馬が麦を喰ったなどとは。ニ人はたまげて顔を見合せた。
 たしかに神馬のロには麦の葉っぱがついていたそうだ。

 与三郎と孫右ヱ門はこのことを村びとたちに話した。村の寄合では麦を喰っちゃんではと神馬にませ木をかけることにしたという。そのあとは麦は喰われなかったそうだ。
 ませ木とは馬小屋の入ロにかける横木をいう。

 


時鳥と兄弟


 昔々兄弟二人が山に住んでいたんだと。そして兄んやの方は我がまま勝手の気持だったというだない。兄は外に行っていろいろ仕事はしてくれっけど家の中の事はおかまいなし、家の中の掃除とまかないはすべて弟の役割だったんだと。

 ある時のタ食、弟は兄んやのために特別にうまいご馳走をこしらえて兄んやに「早くおあがり、おいしくできたから」と兄さんに食べさせたんだと。兄さんはおうこれはうまいと全部食べてしまい「いま少しないか、お前は俺のいない間になんぼか腹いっぱい食べたんだべ」といったんだと。弟は「いや、そんなことはない私は兄さんに食べてもらおうと思って少ししか食べていない」
といったんだと。兄は「いや、そんな事はない。きっとお前は腹いっぱい食ったに違いない。そんなにいい訳けをするなら、お前の腹を裂いて見よう」という事で弟の腹を裂いて見たんだと。そうしたら本当に何も食べてなかったんだと。弟は兄さん思いだったので、兄さんにばっかりおいしいものを食べさせていたんだと。

 兄さんは、弟の腹を切っては見たものの「あーこれは悪かった」
と思ったんだべない、時鳥になって飛び出し「ぼっと、ぶっざけた。ぼっと、ぶっざけた」と飛んで行ったんだって。その時、弟は死んでしまったし兄の方は時鳥になって自分が悪い事をした、これまでに弟が自分に尽してくれたのに、弟を疑って悪い事をしてしまった。自分では本当にすまないと思って時鳥になったんだと。そして、その罪ほろぼしに一日八千八声鳴かなくてはなんねんだと。


[検索] [目次] [PDF] [前][次]

掲載情報の著作権は岩瀬村教育委員会に帰属します。
岩瀬村教育委員会の許諾を受けて福島県教育委員会が加工・掲載しています。