ふるさと昔話 - 018/056page

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絡をとったものと思われる。
やがて藤原家の迎いの一隊に護られた義経、弁慶の一行は身も心もかろやかに平泉に向ったものと思われる。

 


  今泉新田昆沙門堂縁起


 表新田と裏新田の境の山林にある昆沙門堂は昔しは近郷近在に知られた霊験あらたかな昆沙門様として、須賀川の長松院の昆沙門様と共に兄弟昆沙門として名高いものであったが、兄の須賀川の東の昆沙門様が人々に今もなお知られながらも、弟にあたる西の昆沙門様は最近あまり振わないようである。どうしどうしての昆沙門様は誠に霊験あらたかなる神様である。

 この昆沙門様には古老に聞いた話しではあるが面白くも、ありがたい縁起がある。
 表新田の坂本某なる者は元録四年部落の友人五名で、長い長い伊勢参りの旅にでた。
 七日間の水ごうりをとって身を清め途中の無事を祈り里人や近親者に送られてわらじをはいた一行五名は途中つつがなく熱田神宮に参り、名古屋の城を見て伊勢路に入った。

 宿場、宿場は参宮もうでの旅人を呼び入れる飯盛りの女が赤いたすきに伊勢言葉で客引きに懸命である。その賑やかなことは田舎のお祭りのようなもので、毎日こんなに宿場は賑やかなのかと思うと本当に大したものだなあとお互いに感心し合った。
 一行は津の町から五里程離れた亀山の宿場で宿をとった。明日いよいよ念願のお伊勢参りができるかと思うと、今までの長旅の疲労が一度に出てきたように気が楽になり、一同は珍らしく気持がはずんで話がもてた。

 宿は満員で合い部屋の客が二人、計七人が十ニ畳の大部屋に入れられたので一同はむっとしたが面長な愛そよい飯盛女中に、
 「すんませんなあたてこんで、でもなあ、袖すり会うも他処の縁とか申しますからお国の土産話しをお互いにたんとして下さいなあー」と言って横目でにらまれると、田舎者には理屈が出ない 「ハイ ハイ」と返事をして、どっちがお客様だか主客転倒してしまった。

 お互いに気さくく自慢話しを語り合い晩酌を一本ずつ飲んで飯にした合い部屋の二人はおつきあいだからと言って一本ずつ兆子を注文してお膳に立てたが、ちょこに一杯だけ飲んで残りを五人に進めて飲ましてくれたので、五人は旅の疲れもあって風呂を浴びて床についた。明日はゆっくり歩いても伊勢につくと思うと今夜はゆっくり眠れると安心した。

 翌朝、女中の膳を運び入れる音に目をさまし、旅仕度を整えようとして財布を敷ぶとんの下からとろうとふとんを上げたら、肝心要の財布は影も形もないのに驚いた。五人のうち三人までが枕探しに合ったのだ。
 合い部屋の二人の客は今朝四時頃、急の旅とかで朝飯しぬきにして夜の中に帳場をすましておいて一番たちをして行ったと云う。
 「さてはタべの合い客、ニ人が枕探しか」
と宿中さわいでみても後の祭りとなった。
 宿場役人の型通りのお調べも終ったが五人は途方にくれてしま


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