ふるさと昔話 2 - 002/066page

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     高村の甚造兵衛(づんぞうべえー)の話

  馬よりも速く

 

 むかし ある時 長沼のお城のお殿さまが、水戸(みど)のご本家に急用ができて、一日半日(ぴ)で水戸のお城までかけ走る馬と、それに乗る者はいないか、と四方をさがしましたが、誰もみつからなかったので困っておりました。

 その時、一人のご家来が「ご領内の成田村高村という所に甚造兵衛(づんぞうべえー)という水のみ百姓が、馬よりも速く走ると村人だちが申しますので、必ずやこの大役をはたしてくれるものと思われますので、いかがなものでございましょう」と申し上げました。

 早速 甚造兵衛(づんぞうべえー)はお城へ呼び出され
「この手紙は、火急の用件なれば明日の夕刻までに水戸のお城まで届けてくれよ」
「へー かしこまりやした お殿さま、ご安心下さりませ、甚造兵衛(づんぞうべえー)一生一代の大仕事と心得やして、一生懸命つとめさせていただきやす。これから夜どーしかけて、明日の朝には必ずおしろにお届けいたしやす」といって、台所へいって三升飯を炊いてもらい、一升飯をぺロッとたいらげ、二升飯を握り飯にして腰にさげ、手紙を背おって水戸へ向かって一目散、白河、棚倉、大子(だいご)を経て、夜明けのトリの鳴く頃には、お城のお掘り端の柳の下にどかっと腰をおろし、握り飯をうまそうに食いながらお城の門のあくのを待っておりました。

 かえりみち、道ばたの小川から風呂水を手おけでくんでいる、若い嫁さんがおりました。
 井戸が近くにないのか、小高い岡の上の家まで、水おけを両手にさげ、はこんでいるのを見て、大層気の毒に思って
「わしが水くみ手伝うべー」と風呂場から風呂おけを両手にかかえ小川にジャブンと入れて、水を一杯汲み入れたままスタコラスタコラ小高い岡の上の家の風呂場へはこびこみましたそうな。


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