ふるさと昔話 2 - 005/066page

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  お天道様と競争した話

 

 昔、ある人が、お天道様と競争したんだって。朝、日の出と一緒にヨーイドンで西に向って歩き出し、夕方、陽が沈むまでにどっちが早いか試したそうだ。途中で休んでは負けんので、握り飯を食いながら歩ったそうだが、夜になってショボショボ帰(けえ)ってきて「負けた」というんで聞いてみっと「お昼までは何とか頑張ったが、くたびれて「昼過ぎに越されてしまった」っていう話です。

 また、この人は「お天道様まで行ってみでい」と、食い物をいっぱい舟に積んで、東に向かって漕ぎ出したそうだ。毎日毎日漕いだが、仲々近付(づ)かない。何日経ったかも忘っせる程漕いで、やっと浅くなり、水がドロドロに変(かあ)った。「いよいよ近くなったが」と漕ぎつづけると、ヨシのような草の生(お)えだ陸があり、おかしなけだものが近寄って「おめえどっから来た」と聞かっちゃんで「日本から来たんだが、お天道様へはまっと遠いのか」と聞いだら「おめえここをどごだど思う、ここは宵の明星だぞ、ここまで来んのに何百日かがったが知んにぇが、こっから先を考えで見ろ、何百日も漕いで夜中の明星、そっから何百日も漕いで明けの明星、その次がお天道様だが、途中に食い物はねい、残りどの位あっか」といわれて調べっと、半分しか残っていねい。「悪(わり)いことは言わねい、とてもお天道様までは行げねいがら、戻ったらどうだ」といわれ、あきらめて戻ったという話です。

お天道様と競争した話


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