ふるさと昔話 2 - 007/066page

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  毘沙門様のお守りが泥棒を捕えた話

 

 今泉新田の仙蔵どん達一行五人は、お伊勢参りの四十日の長(ながー)い、長(ながー)い旅に立ち、いよいよ明日は伊勢参りができる、亀山の町に宿をとった。宿は大変こんで ノッポとチビの二人の旅人との合い部屋で 七人が一つ部屋にねることになりました。

 一行の五人は、夕飯にお酒をお銚子一本を飲んで 旅のつかれもあって高いびき。

 翌朝 六時半に起きて ふとんをあげて驚いた。枕の下に入れておいた財布が、五人中三人がなくなっているので大さわぎ。
 合い部屋のノッポとチビは、夜が明けぬ中(うち)に宿を出た立ったという。「さてはあの二人が」とさわいでみてもそれは後のまつりだ。

 そこで仙蔵どんは、持ってきた故里(わがむら)の新田の毘沙門様のお札を宿の床に立て一心におがんだんだよ、そしたら耳もとで「大阪の生駒(いこま)の毘沙門様に 先に参れ!」という声がきこえたので、一同は相談をして生駒の毘沙門様へお参りするため、鈴鹿の峠道にさしかかった。ところが峠の道ばたに、ノッポとチビの二人が抱き合うようにして、すくだまっている。五人は、「枕探しの泥棒野郎!」と肩を押えて、つかまえた、そしたら、ノッポの男は、どもりながら「すんません、すんません、悪い事はできません。ぬすんだ財布の一つに入っていた恐ろしいお姿の神様を見たとたんに、二人は震えだし、口もきけず、手も動かず、どうにもならなくなったんでごぜえやす。財布は全部返しやす。どうか生命(いのち)だけは、お助けくだしゃんせー、へえーこのとおりでごぜえやす」と頭を地べたにすりつけて手を合せてあやまりましたとさ。

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