ふるさと昔話 2 - 008/066page
牛の足に砂金ピカピカ
暑い 暑い 夏の或日(あるひ) 牛引(うしび)きの長次(ちょうじ)は、追分(おいわけ)の問屋場(とんやば)から、牛の背に荷物を積んでトボ トボと七(なな)まがり坂をおりてきた。
その時 足もとの草むらから突然 バタ バタ バターと羽音も高く山鳥が二羽飛びだした。長次は、キモをつぶさんばかりに驚いたが、それよりも牛の方がびっくりして「もー」と一声、手綱(たづな)を振り切って一目散に山坂道を駆けくだっていった。
長次は「いつも牛仏様(いしぼっけさま)の処(ところ)で、牛仏様を掃除(そうじ)しながらひとやすみすんのーを、知ってっぺえーから、きっとそこら辺で草でも喰(く)ってっぺえー。」と一人ごとをつぶやきながら、額の汗をふきふき七(なな)まがりの坂をかけおりた。
あんのじょう牛は、牛仏様の近くの川原で、うまそうに水をのみながら長次の顔を見て、もーもーと鳴いた。
「ほーら、ほーら、ハイー、ハイ」と牛の手綱を収って道まで引きだして見て驚いた。牛の前足がお天とうさまの光をうけてピカ、ピカとひかっていた。手に取って見ると砂金!まぎれもねえー本物の砂金だ!
これはてー変だあーとそこらあたりを探すと、牛仏様の近くの、朽ちた大木の根かぶのそばの足跡の穴に、砂金が土砂に混じって五升ほどピカ、ピカと光っていた。
「牛仏様、有難うごぜえやす 有難うごぜえやす 牛仏様」と手を合す長次の目から、大つぶの涙がポタリ ポタリと地におちた。長次は本当に嬉しかったんだねー。その後、長次は長沼町の問屋のご主人さまになって一生、幸せに、幸せに暮したそうな。
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