ふるさと昔話 2 - 012/066page
頭の三ツある大蛇の話
昔昔、今泉の舘山という岩山に、頭が三つある大蛇がすんでいたそうな。
毎月、村人の牛と鶴を三頭三羽ずつ喰(く)っていたので村の人々は大変困っていたそうな。
大蛇が怒ると、川や池や田の水を飲みほして旱魃(かんばつ)にしたり、雨を降らして大洪水にしたから、大蛇を大魔神のように恐れていたんだね。
それでもこの大蛇は、白方神社のお仕え様で舘山を七巡(ななめぐ)り半もするでっかい蛇だから、どうにもしょうがなかったんだよ。ところが、ある年の秋の夜明けに、村の組頭が飼っていた上組(かみぐみ)の鶴と、下組(しもぐみ)が二羽、おりをやぶって南の空へ飛んでいったんだ。
それから幾月かたったある寒い雪の降る夕方に、一人の旅の坊様が村にきて、名主様の家にとめてもらって、その晩恐ろしい大蛇の話をきくと、よく朝、暗い中(うち)に神社へお参りし、社の後の大岩を、もってた金(きん)の五鈷(ごこ)で、
「おんあぼきゃあー」コン、コン、カン
「びーろしゃーなあー」カン、カン、コン
「まかぼーだらーまに」コン、コン、カン
「はんどまちーんばら」カン、カン、コン
「はらばーりた、や、うんー」コン、コン、カン
とたたいたんだ。すると大岩がバリバリバリーとものすごい音をたててニツに割れた。
中から大蛇が、「ガー」と大口を開けて飛び出し、天へ向ってとび上って消えた。すると、こんどは大きな岩がドスーンと空から神社の庭に落ちてきた。
これからというものは、今泉地方の村々の人々は、大蛇におどかされることがなく平和にくらせるようになったそうな。
大蛇は大石になっていまでも神社の庭にあるそうな。旅のお坊さんは、弘法大師様という、いらい、いらいお坊様だったそうな。
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