ふるさと昔話 2 - 034/066page

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  節句の菖蒲(しょうぶ)のいわれ

 

 ざっとむかし、すごくいいお屋敷に、年のころ十六、七のめんごい娘が住んでいたんだと。
 すごくでっかいお屋敷で、離れには女中や小間使いを住まわせていたんだと。

 この娘のところに、それはそれはめんごいはかまをはいた若衆が、遠くから「カラコロ、カラコロ」と高下駄の音をならして、毎日毎日通っていたんだと。
 夜も遅くなると、また「カラコロ、カラコロ」と高下駄をならして、どこともなく帰っていったんだと。

 若衆が、どこから来て、どこに帰んのかもわかんねかったんだと。どこのだれが聞いても何にも教えねえので、だれだかひとっつもわかんねかったんだと。
 そのうちに娘は、若衆をうんと好きになって「嫁さまになっちぇ」ってゆうようになったんだと。
 素姓がまったくわかんねえでは、所帯はもたせらんにので、若衆に「なんていうんだい。どこに住んでいんだい」って聞いたんだと。

 若衆は、だまってばっかりで、やっぱりなんにもおしえねえんだと。なんぼ聞いても同じなんだと。
 それでも、娘はやっぱり思いはつのるばっかりだったんだと。

 しかたねえから、若衆が帰っとき、わかんねように小間使いにあとをつけさせたんだと。
 小間使いは、ちょうちんもつけねえで、くらい夜道をそっとつけていったんだと。つけらっちいんのもわかんねで、若衆はどんどん山に入っていったんだと。

 山に入って、半道ぐらいすぎたところで若衆はうしろをふりかえったんだと。小間使いはこしも抜けるほどたまげたんだと。なんと、若衆は「へび」だったんだと。
 いそいでお屋敷ににげかえって、ご主人に知らせたんだと。

 話を聞いてたまげたご主人は、「わげのぐるわにしょうぶをさして、しょうぶ湯にいれればへびもはいってこれめぇ」って、娘をしょうぶ湯に入れたんだと。

 その時に、娘はへびの子供を身ごもっていたから、しょ


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