ふるさと昔話 2 - 060/066page

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  山賊と大名行列


 須賀川の下宿(しもじく)に、御所の宮(ごしょうのみや)という岩山があります。この頃、この岩山に忍術を使って悪い事をする山賊が住み着き、村や町の人々は大変困りました。剣道や柔道や空手などが上手で、腕に自慢のある若者たちが山賊退治にでかけてはみたが 皆んな、命からがら一目散に逃げ帰ってきます。

 御代官様も、これは大変なことだと「山賊を退治した者には一金(いっきん)十両をごほうびに与えるぞ」との立て札を村々にたてました。
 人々は、これを見て、金もほしいが命もほしい、命あってのものたねだ。クワバラ クワバラといって、誰も志願をする者がありません。

 ところが、須賀川の羽黒山(はぐろやま)というお寺の、法念という小僧が山賊退治を申し出ました。
 夜もふけた真っくらやみの御所の宮の岩山の坂道を「おーい山賊さんいたかーい いたらばでてこーい、お前さんと忍術くらべに来たぞー」と大きな声をだしながら登って行きました。すると、熊の皮を着た山賊が出て来て
「はっ はっ はー おれと忍術くらべとは度胸のいい小僧だ さー来い」
「山賊さん 試合をやって、私が負けたらお前さんの手下になってやるが、私が勝ったらお前さんは私の家来になるんだぞーよいか」
「よーし見ていろ、おれが先に化けてやるからたまげるな小僧」というと パーツと煙になって姿を消して「これが火頓(かとん)の術というものだ 驚いたか小僧」という声がそばの杉の木の高い枝の上から声がしました。

 法念は「なーんだ、そんな火頓の術なんておれの方では寺小屋の一年坊主の術だぞー」「そんじゃあ これではどうだー」というと大きな 大きな杉の木のような三つ目の大入道の坊主に化けて、大きな舌をべロ ベロたして、いまにも法念を食わんばかりです。これには内心驚いたが、そこは平気な顔をして、
「ふーう、そうとうやるね山賊さん だがね、おれのものはそんなありふれたものとは忍術がちがうよ。おれが殿様に化けて二百人もの家来をつれて真昼間(まっぴるま)堂々と、下にー 下にーと大道をねり歩く大名行列をやって見せてやるよ」


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