ふるさと昔話 2 - 062/066page

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  へびが蛙に追われた話


 昔ある所に、大変な怠け者の男がいだど。幾らかの田畑があるが、手入れをしないで毎日毎日ぶらぶら遊んでいるので、田畑は草だらけ、よそでは、秋になっとたくさん米や畑のものが穫(と)れるのに、飯米にも足んにえ有様で、食うや食わずの貧乏暮らしである。そんな所にお嫁にくる者もねえ、銭(ぜに)もねえ、米もねえ、何もかもないものづくしである。借りようたってそんな道楽者には貸す人もねえ、きょうも一日、足を棒にして歩き廻ったが誰からも相手にされず、とぼとぼ家へ帰ろうとする所だった。道の傍らで何かカサコソ音が聞こえた。立ち止まって音のする草むらを見たら、なんと世にも不思議な光景が目に入ったのである。

 へびが逃げ廻る後からピョコン ピョコンと蛙が追っているのである。男はわが目を疑った。蛙がへびにつかまってキューキューと悲鳴をあげているのはよくあることだが、まったく反対なのである。しばらく眺めていたが逃げ廻るへびが可愛想なので蛙を追い払ってやった。そしてへびからこの出来事を聞いたのである。「お前はふだん蛙を食いものにしている筈なのに、きょうの有様は何事だ。おれが助けなければ命があぶなかったでねえのが、だらしのねえ話だ」というと、へびは涙を流しながら「まことにそのとおり、ところがおれは冬眠などといって長い間働かずに寝てて過ごしたために道楽ぐせがついて、食いものに追われる始末になった。世の中で食いものに追われる程みじめなものはねえ。あんたはそんなことあるめえが、おれの二の舞踏まねえように心掛けねばなんねえよ」といわれてギクリとした。へびに説教された道楽男は、なる程飯米に追われるほど辛いことはねえ、と気持ちを入れ替えて、その日から一生懸命働いたので、米も豆もよそより穫れて暮らしがよくなったという話だない。


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