ふるさと昔話 2 - 064/066page

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  七福神が七組も揃って


 須賀川の中町に、中原さんという大きなお店がありました。このお店のご隠居さんは、愛宕山のよく見える良い所に別宅を建てました。
 今日は、その落成新築祝いで、本町の慢頭屋さんに、お祝いの慢頭を五十こ注文しました。

 慢頭屋の小僧は、天びんぼうで慢頭の入った箱をかついで、ご隠居さんの別宅へはこび、玄関でふたを開けて数えて見たら、何回数えても四十九こしかありません。これを見ていたご隠居さんは「こら小僧 お祝いの慢頭が四十九とは何事だ、縁起が悪い、縁起が悪い。お前はまだ年が若いからよくわからないかもしれないが、四十九とは、しぢゅう苦があって苦労するといって、誰でも嫌がる数字だ。世間一般から嫌われている数字だ。今日の目出度い日に、よりにもよって縁起の悪い数字の慢頭を持ち込むとは何事だ。慢頭は受け取れぬ、帰れ帰れ」とカン カンです。

 中原のご隠居は心のやさしい、親切な好い人なのですが、すごくとっても縁起をかつぐおじいさんでしたので、「これからすぐにお店へ帰ってもう一つもって来ますから」といって何回も頭を下げてあやまっても聞き入れてくれません。このまま店へ帰れば、こんどはお店のご主人にしかられてお店を追い出されてしまいます。そこで小僧は、とほうにくれて道端(ばた)の桜の木の下で泣いておりました。

 この時、ここを通りかかったのが諏訪神社の神主様でした。神主様は親切に「慢頭屋の小僧さん一体どうしたんだい。お腹でも痛いのかい、お金でも落したのかい」とたずねてくれました。小僧は、泣く泣く四十九この慢頭のお話をしました。「あーそうか中原のご隠居様がー」と神主様はしばらく考えておりましたが「小僧さん、さあー私と一緒に、もう一度、ご隠居さんの処へ行ってみましょう。」と小僧さんをつれてご隠居さんの別宅の玄関のところに来て「ごめん下さいご隠居さん。さっきの慢頭屋です」というと、ご隠居が早速でて来て「縁起でもない慢頭屋 顔も見たくない、さっさと帰れ…」

 ところが、お諏訪神社の神主様はご隠居さんのお怒りなどには無頓着に、持ったる幣束(へいそく)を左右に、パッサ パッサ


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