玉川村勢要覧 -023/038page
優れた石造美術や古墳群
阿武隈川の流域に含まれる丘陵地 帯や盆地が交互に連なる地形の中通 り地区に位置する石川郡玉川村には、 地域性を反映した濃厚な石造美術、多 くの石仏・板碑などが広く点在し、そ れは阿弥陀浄土信仰が庶民の生活に 強く根ざしていたことを意味します。
白華山厳峯寺にある国指定重要文 化財「源基光の石造五輪塔」は密教教 理の五大思想である空・風・火・水・地 を石で立体的に形造り、方形の地輪 (基礎)円形の水輪(塔身)・三角形の 火輪(笠)・半月形の風輪(請花)・団形 の空輸(宝珠)より構成されていま す。墓石、塔身、笠屋根のみがその面 影を残していますが、その威風堂々 とした姿は荘厳で神々しく浸食はし ていても、石川一族の栄華をいまに 伝えるものがあります。
東福寺は、東国布教僧・徳一上人の 開基で日本三薬師として名高い古刹 です。同寺の境内には、三十年に一度 しか公開しない薬師如来像や鎌倉時 代に造られた県重要文化財に指定さ れている十二神将を安置しています。
また、舎利石塔は、宝珠露盤を置い た屋蓋と塔身、台座で構成され、正面 は石扉造りで高さ百八十センチメー トルの大きさ。周りには弥勒浄土の 49院の名が刻まれ、龕内部の中央に 孔穴があり、そこに舎利(骨)を納め るようになっていて、大日如来像で ふさがれるようになっています。鎌 倉時代の弥勒浄土往来の思想を現在 に伝える稀少価値のある石造物とし て、昭和10年に国の史跡に指定され ています。
平成9年から本格的に発掘調査が 行われた江平遺跡は、縄文時代晩期か ら奈良・平安、中世に至るまでの各種 遁跡が発見された複合遺跡で、阿武隈 川流域の歴史を解明するうえで注目 されています。とくに奈良時代の歴史 資料として出土した木簡は天平15年 正月の聖武天皇詔に関する資料とし て全国的に大きな話題を集めました。 この他にも、約5万uの広大な敷地か らは木製の桶や鋤身(すきみ)、金属製紡垂(ぼうすい)など が見つかり、当時の生活を裏づける貴 重な発見となりました。
小高字江平地内の沢地から出土した木簡は、聖武天皇が発した仏教令が当地にまで伝わったことを証明する貴重な資料として高い評価を受ける発見となった。
緑の苔むす東服寺境内にある舎利石塔。元久二年乙丑・当時の開山和尚び舎利が安置されていた。弥勒浄土往生の思想を表現している。
藤原時代末に領主源基光の墓として建立された五輪塔。仏教美術至上貴重な財産として厳峯寺参道の老杉傍らの覆堂に安置されている。