玉川村勢要覧 -026/038page
笛二名・鉦一名・歌方七〜八人が 奏でる曲と歌にあわせて、立ち踊りと 座踊りが披露されます。伝えられてい る曲目は九曲で、歌の終わりに「えこ うじょうぶつ、なむあみだぶつ」とお 噺子がはいります。真夏の炎天下、新 盆供養の家々を練り歩く静かでおご そかな光景に出会うとき不思議と心 打たれるものがあるのは、普段忘れて いる日本の原風景を垣間見た気がす るからではないでしょうか。
念仏踊りの他にも子どもたちに よって伝承されている踊りがありま す。北須釜地区に残る三匹獅子舞は、 寛永十六年に都々古別(つつこわけ)神社葺き替え の祭典の際に氏子によって奉納され たことが始まりの勇壮な舞。後世に残 そうと北須釜地区で特別な行事のと きに演じられています。また「平鍬(ひらくわ)」 という民俗芸能が各地区で明治時代 まで数多く残り、鎮守神社に奉納され てきました。現在は秋祭りに小高、竜 崎、北須釜、南須釜、山小屋の各地区 で踊られるだけとなりましたが、平鍬 を持って踊る姿は、農耕民族として 豊穣の秋に氏神様に感謝する祖先を 思いおこさせます。
小高地区の大雷神社・秋の祭礼と して神社本殿で披露される浦安の舞 は、巫女(みこ)装束に花簪(はなかんざし)をさした少女た ちが鈴を手に持ち、世界の平穏を祈 念して、おごそかに舞う優雅なもの。
夏休みを迎えた子どもたちにより、 毎年、真剣に稽古が行われています。このように玉川には人々の祈りと 厚い信仰が育んだ多くの伝統的な踊 りが保存されています。万物や神を崇 め、先祖の魂を鎮めるさまざまな踊り は、いにしえの人々が残してくれた大 切な祈りの文化だと感じるのです。
玉川には伝統が息づく
平鍬踊り
笛や太鼓の調子に合わせ、笠鉾を先頭に円陣を組み、威勢の良い掛け声と供に踊る平鍬踊りは実りの秋の感謝を象徴する。
浦安の舞
大雷神社と川辺八幡神社で奉納される浦安の舞は、神聖でおごそかな優雅さが漂う。
三匹獅子舞
女獅子・太郎獅子・次郎獅子が主役となる三匹獅子舞は、宮参り、餅つき、居眠り、女獅子うばいなどの数曲で構成される。