あさかわまちが生んだ偉人-006/093page

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い自転車を囲んで、子ども達は楽しそうです。富三も久しぶりのふるさとに、とても安らいだ気持ちになっていました。
さて、先ほどから、このにぎやかな遊びの輪に加わらずに、遠くからじっとみんなを見つめている男の子がいました。先ほど出てきたお年よりの、少年時代のすがたです。着物はつぎはぎだらけで、そのそでやえりはよごれて、てかてかと光っています。ひと目で、まずしい家の子であることが想ぞうつきます。
この男の子に気づいているのかいないのか、子ども達はまだむちゅうになって自転車で遊んでいます。
その時です。
「さとちゃんも乗せっぺ。」
という声がしました。富三の声でした。
とつ然の声に、みんなの動きが止まりました。みな、それぞれに顔を見合わせています。その男の子も、どうしてよいのかわからない様子でその場に立ったままです。
「さとちゃんも乗せてやつぺ。」
もう一度富三が言いました。

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