あさかわまちが生んだ偉人-021/093page
となので、実験の用具も旧式です。針の先の側面に穴をあけた注射針を作るなど、何もかも一人で工夫しながら研究をすすめました。先生のいわれた「ガン」についてさえ、ドイツの化学の本に三行ほど書いてあるだけです。
問題を解決するため、富三の研究が始められました。
研究のための動物には、モルモット、白ネズミ、マウス、ラットが使われました。研究は、まず、茶かっ色の粉末であるアゾ化合物を油に溶かして、動物たちに食べさせたり、注射したりすることから始まりました。
研究を進めていくうちに、アゾ化合物を油に溶かしたものを、米の粉にまぜて団子を作り、蒸して乾燥させたものを作りました。これを動物に食べさせるのです。この工夫により、動物の甲状腺に変化が見られました。しかし、この研究を重ねていくうちに、ラットの甲状腺の変化のし方だけを研究するようになりました。
ラットの甲状腺の変化は、他の動物と比べて弱かったのですが、団子を主食にして与えたところ、最初わずかに見られていた変化が続いて、新しい細胞のかたまりができるようになりました。富三は、この段階で、ガンを発生させる研究に希望をもったのです。