あさかわまちが生んだ偉人-030/093page
しに来ると、「ごくろうさん。」と言って頭をなでてやり、近所の人が困っているときには親身になって相談にのりました。また、母は、自然のきまりをよく知っていて、けっして無理なことはしませんでした。
ある時、富三が中心になり、母に入れ歯をすることを勧めましたが、死ぬまで入れ歯をしませんでした。
入れ歯をしなかったことには、理由があるのです。母は、「年がとれば歯が弱くなり、ぬけるのは当たりまえである。歯がぬけるころは、体の内臓もそれぞれ弱っているはずである。歯だけ若い者と同じように強くして、欲ばって物を食べるのは、内臓にもそれだけ負担をかけることになり、体のためによくない。この歯ぐきでこなせるだけのものを食べて、それで生
1963年(昭和38年)60歳
還暦の年東京大学教授室で(土門拳氏撮影)