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三春駒の伝説
51年光村図書出版 5年国語
むかし、京の都に、坂上田村麻呂という強い武人がいた。
見上げるような大男で、その目はらんらんとかがやき、はり金を植えたようなひげは、むな元までのびていた。
そのころ、東北の地方に、大多鬼丸という力の強い人がいた。
常に大ぜいの手下を連れて村々をあらし回り、おにのようにおそれられていた。
田村麻呂は、軍勢を率い、この大多鬼丸をせいばつに行くことになった。
いよいよその出発が間近にせまったころ、
ある徳の高い住職
が(注1)、お別れにやってきた。そして、田村麻呂に1つの小さなはこをわたしてこう言った。
「このはこの中には、
仏様の像をおきざみした残り木
に(注2)、わたしが精をこめてほったものがしまってあります。お役に立つこともございましょうから、どうぞお持ちになってください。」
「それはありがたい。ちょうだいします。」
田村麻呂は、お礼を言ってこのふたを取ってみた。
中には、小さな木ぼりの馬が百頭、ちゃんとくらまで付けてならんでいた。
田村麻呂は、そのはこを持って都を出発した。
○
田村麻呂は、今の福島県の三春町の近くまで来て兵を止めた。大多鬼丸は、その
近くの山
に立てこもっていたのである。
田村麻呂は、まず、大多鬼丸にこう参するようによびかけた。
しかし、大多鬼丸はこう参するどころかせせらわらって、「都のやつに何ができる。田村麻呂など、ひとひねりにひねりつぶしてくれるは。」
といって、山からおりると、いっせいに矢をいかけてきた。
そこで、田村麻呂は、まっ先に馬を進めて、
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