西郷村社会科副読本 DATA BOOK-063/147page

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[5]―2 西郷村の民話(「福島県の方言」より)
西郷(にしごう)の婆(ば)っぱの話 (西白河郡西郷地方)
 (1)蛇の婿(むこ)入り
 (2)炭焼吉次(きちじ)
 (3)長坂小僧
 (4)塩吹き臼(うす)
 (5)食わず女房(にょうぼう)
 (6)花咲爺(はなさかじい)さん
 (7)まりつき唄
 (8)小豆(あずき)の化(ば)け蟲
 (9)蛙(かえる)の恩がえし
(1)蛇の婿入り
 一人娘があって、奥の座敷さ寝でで、そこさ男んなって毎晩(めいばん)通って来んだって、蛇が。蛇とわかんねでいたんだって、その娘がな、それから変だなと思って、その家の裏に竹薮(たけやぶ)があんだって、その竹薮の方から来んだってなイ。男ひとりして奇体だおかしいな。ハア子供が出来んだってゆうだナ、子供が出来んのに、ちっと様子見ておかねど困っから見でくれべど思って、それからずっーと足跡つけてったっづうだ。「人間のどこなんか、やたらに通うもんでねえぞ」って。「人間っておっかねものなんだからナ。針一本刺さったら大変なんだから、行ってなんねぞ」って。
 それがら夜待ってたんだってなイ。そしたら、そのうぢスルスルと戸開げで入って来たんだって。また、寝たってゆうたナ。そのあど針で刺してやったって、そしたら呻(うめ)ぎながら行ったっんだなイ。まだあど追ってった。「なんだやらっち来たな」って、「やらっち来た」つった。「人間なんて、なんぼ通ったって駄目なんだから、子供なんてなんぼ孕(はら)ませだって、五月節供の蓬(よもぎ)と菖蒲(しょうぶ)の湯たって入れば、ひとりで、子供なんておりてしもうだ。なんぼ通ったって駄目だぞ。蛇の子なんて生まねだから」「ああ、これはいい事聞いだ」と思って、早速ハア屋根さつっつあした奴(やづ)を取って湯にたって入ったんだって、そしたら、子供がおりちゃったって、「俺が腹、痛(いで)から、とめでくいよ。樽ひとつくっちぇくんせい」って樽ん中さゴダゴダって、うんと産んだって。ざっと昔栄えだ。
(2)炭焼吉次
 むかし京都の殿様に娘があって、幾つになっても嫁に行かなかったんだと。そしたらある晩ナ、夢見たんだと。その夫にな、仙台のはなっぱたに炭焼している人あっんだってナ。その人ほか自分の夫になる人はねえって夢見たんだってナ、そんで訪ねてみっぺというわけでナ、そして仙台さ来たんだってナ。尋ねてみたんだってなイ。知っている人いて、炭焼きしている若い人を訪ねて行ったんだってなイ。訪ねて行ったら夜になったから「今晩泊めでけろ」ってなイ。泊まったら、いや降るは降るは三日も三晩も雨降って、そこの家に泊まっちゃったんだどなイ。そしてだんだん話してナそして訪ねて来たっちゅわけなんだ。そんで、「今夜だけでいい」「そのかあり米も何もねんだから」って、粟で粥煮てなイ。そして御馳走(ごつつお)んなったんだと。そして小判いっぱい持ってっからなイ。「これさえ持ってけばなんでも自分の好きな

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