西郷村社会科副読本 DATA BOOK-064/147page

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の買えんだから」って、おやじに小判持たせで、まず買物にやったんだって。そしたらなんにも買あねで来たんだってナ。そして、「どうして買あねで来た」ったら、「途中で池に鴨がいっぱい浮きでたから、その鴨獲ってお前に食わせっぺと思って、その銭鴨にぶっつけたんだ」ってなイ。「そしたら銭は沈んじゃうし、鴨も何も獲って来ね」ってった。「この銭さえあればなんでも好きな物買えるんだから」ってね。「ああだものでもあんめえや、俺の後の炭焼窯土ひっぱがしたら、こんなものピカピカピカってなっぼでもある」ってゆう(言う)んだと、そしてそのお姫様も行って見たんだってナ、そしたら金だって、イヤア、金がいっぺいなんだって。
 そして子供三人生まっちゃんだって、吉次、吉四、吉六ってナ。そしておっきぐ育って京都の爺様がどこさ行ってナ。そして金(かね)に不自由しているとゆうので、牛に十三段つけて行ったって、金にしてまた牛につけで来たってなイ、そして物騒だからな、熊坂長範(大泥棒)なんて人いたんだってね。それで物騒だから義経様が「奥州まで送ってぐべ」って、送って来たんだとナ。そしたら義経様は、「ここまで来たんだから、ハア大丈夫だから……」って、「俺は関山(せきさん)様さお詣りして行んから」って。そして関山万願寺さあがってナ、そしてその人は皮籠っとこさ泊まったんだと。そしたらその熊坂長範がな今度(こんだ)義経がいねもんだから来てナ。皮籠焼いでナ。そしてこうほいたんという川の■さねまって逃げらんにだって。逃げたんだけっども、皮籠の人たっちゃ情ねんだかなんだか、おっかねんだかなんだか、助けてくんにだって。関山から降りて来たらなイ、殺された。長範逃げちゃっていねんだって、そして「俺がな、送ってげばよかった」って、泣き泣き行ってその村さ着いだったかナ。そして長泣きってゆうんだってナ。そして、その吉次、吉四、吉六ってゆう墓あるんだってナ。
(3)長坂小僧
 長坂小僧は悪(わり)事ばっかりしてたんだって、そしておっか様には、あっちがらもこっちがらも苦情来んだってナ、そしておっか様が口説くから、おとっつあまが怒ったんだってナ、おとっつあまが怒っと、ポンと裸足(はだし)で外さ飛び出しちまァ。そしっとおとっつあま足半草履履いで、あどから追っかける。そんじゃってとでもとでも、篠っからん中から、もやん中からおとっつあまの入らんにぇどこさでもなんでも入んだって、それでおとっつあまは仕方なく勘当したわけだんべ。
 そしたら、服部の旦那様ってな、「お前がそれほど盗みが上手なんだから、俺がこの槍くれっから、んだからこの槍は何日(いつか)の何時(なんじ)に取りに来(こ)」ってわけなんだ。それで服部様は寝ねでその槍を掴んであるわけなんだ。そしたら、その晩げ、うんとどしゃぶりの雨なんだって。んで、傘さして長坂小僧行ったわけだナ。傘は雨垂れの落ちっとこさ置いで音させでんだ。そしたら服部様は、「俺寝ねで、こうしていっがら取りにこらんにぇでいんだナ、野郎可愛そうに」ど思って、槍を持っていたんだってナ。したげんじょも、立てていたから、槍の先は天井の方にあったんだってナ。そしたら長坂小僧煙出しから入って梁を渡って来て、そして服部様が持っている槍の先を持ってったわけだ。そして持ってぐ時、服部様はくれる約束だからいいんだっけっども、そこさ歌をつくってったって。「服部はんぞう槍はんぞう、裏のはんぞうはにはんぞう」って、歌を詠んでいがっちゃのがごせやけて、あと追わせだわげだ。そしたら南会津の「塔(とう)のへつり」を逃げで、塔のへつりの岩ん中さ隠れっちゃってゆうだナ、そして岩ん中さむぐっちゃって、「来い来い、ってゆうだげんじょも、掴(つか)めっこど出来ねんだって。

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