西郷村社会科副読本 DATA BOOK-065/147page

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(4)塩吹き臼
 兄(あんにゃ)と舎弟(しゃてい)がいたって。兄はどんどんどんどんて家(うじ)の中まんにゃあだげんじょも、よぐよぐのけちん坊のしぶったれなんだって。そして、ある時貰(もれ)い者訪ねて来て、「泊めで貰いで」ったら、その兄は、それほどどんどんやってんのに、「泊めらんにぇ」ってゆうわけなんだと。それで舎弟の方はやっとこすっとこ食ってるありさまで、ろぐな布団もねんだげんじょも、「俺家さやあべ」って、家さ連れでって、布団もね位(くれい)だから、着物も着ねで飲まず食わずに泊まって、そして明日(あした)の朝げまで泊めで、そしてわがの食わねで、そして食わせでやったって。
 貰いものは褒美に何か置いてったんだど。
 石臼のような按配(あんべい)で、「米出ろ、金出ろ」って回わすどゆうど、なんでも出んだってゆうだナ。舎弟の方で何でもどんどんどんどん出るもんだから、今度(こんど)やっかんで、此頃ねえ物ねえ位に間に合って、どうしたんだかと思って、兄も欲深だから、縁の下に隠れで聞いでいたんだって。そして舎弟のいね時盗んでって、今度船ん中で、「塩出ろ、塩出ろ」って回わしたら、なんぼでも塩出て盗み聞きしたんだから泊めっこと出来ねえで、船が沈みっきりになっちゃったと。
(5)食わず女房
 その人が堅いっちゅうだか吝(けち)いっちゅうだかわかんねげんじょも、飯を食わせんのが惜しいんだって。そんじぇ、「飯を食わね女の人がいだから世話してやっぺ」って、そして世話してやったんだって。そして毎日見っと、毎日米がどっさと無くなってぐんだと。奇体だ、外の人は持ってぐわけはねんだから、どっで、そのおとっつあまは商(あきねい)だったんだって。毎日背負いっこ商に出たあとで、あんまり米が減(へ)んので様子見てたんだって、商に出たふりして二階屋さあがって、そして隠れで見てたんだって。おとっつあまが出てったから始まったんだと。大きな笊だして米いっぱいざっくざっくといで、大っきハガマ(釜)さ焚いたんだと。そしてその飯(まんま)をどうすんだかと思って見でだらば、握り始まったんだと。握っては頭さ入れ入れしたんだと。はて不思議だなど思って見てたんだって。そうゆうごとしてんだから米が減んだなど思って、そして、「こら! なにしてんだ」どどなったんだ。そしたら梯子もなにも外(はず)っしゃって、そしておとっつあま降(お)ぢらんにぇくしっちまったって。そして盥を持って来て、そして頭の上さ乗せたんだって。そして、「おとっつあん、この上さ降ぢらっせ。この上さ乗っからし」って。盥が入(ひやあ)るやいなや、行っちゃったんだってそしたら、ハア、大変だ。これ、満足ながん(もの)でね。何者が知んにぇど思って感(がん)づいたんだって。
 ハア山奥さ入っちゃったんだつうがら。そして山奥にこういい按配(あんべい)に棚んべに木があったんだって。そごさ行ったらあの木さ掴まりましょうど思って、そしてその木さ掴まさったんだって、掴まさったらそれど知らずに行っちまったんだってゆうな。そのおとっつあまが掴まさったとこは広い菖蒲ど蓮の谷地(やじ)っ場(ば)だったんだって。そごさ隠っちぇだら、頭の上が軽くなったんだばい、これは逃げらっちゃどなって、大っきな大蛇がわあさわあさどやって来たんだって、そうだわい、大蛇だもの、女に化けてたんだから。そして大蛇はあきらめでって、丁度おとっつあまが家さ帰って来たのが五月節句だったんだって、菖蒲の屋根を葺くのはそのわけなんだって。
(6)花咲爺(はなさかじい)さん
 お爺さんは山へ柴刈りに、お婆さんは川へ洗濯に。
 そしたら、赤犬っ仔ど白犬(い)っ仔流っちぇ来たんだって。「白犬っ仔あっ

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