塙町の文化財 -041/105page
構造は、頭から体躯を通して台座まで一材で彫出し、内刳はない。彩色は頭髪を墨彩とし、衲衣部には唐草文(からくさもん)などが描かれる。江戸時代の作例で、台座の一部まで一材で彫出するのは、あまり例がない。一木造の場合、一般的には、像本体のみが一材で台座は別につくる。
この像は、薬師堂の本尊である。普通、如来の頭部は螺髪(らはつ)をあらわすが、この像の場合は渦状に巻いて彫出している。簡略化した表現といえよう。顔貌は幅広く、首も太く、体躯は太造りにつくられる。小さい像ではあるが、量感のある造形である。両手袖口部が内に寄り、やや窮屈そうな姿をしている。これは材の制約によるものと思われる。
六、木造大日如来立像
江戸時代
東浄寺 大字川上字薄久保
像高 五三・五p
一木造 彫眼 彩色五智宝冠(ごちほうかん)を戴き、天衣、条帛をかける。両手は胸前で智拳印を結ぶ。金剛界の大日如来である。裳をつけ、両足をそろえて立つ。裳の中央には、花結びをあらわしている。
この像も頭から体躯を通して、台座蓮肉部(だいざれんにくぶ)まで一材で彫出し、内刳はない。頭頂部及び右手首先に小材を矧ぎ足している。像のやや前寄に木心をこめた材を使っているため、像前面中央部に台座まで通して干割(ひわれ)が入っている。
前述の薬師如来像と同様な構造である。その作風にも共通するところがみられ、量感に富んだ造形である。腰部以下に著しく量感をもたせている。そのため上半身との均衡を崩してしまっている。薬師如来像ほど調和は保たれていない。また衣の襞(ひだ)の彫出なども鈍くなっている。量感のある体躯、台座まで一材で彫出する技法構造など、薬師如来像との類似点は多い。おそらく薬師如来像に倣ってつくられたものであろう。