塙町の文化財 -045/105page
先を欠失し、手指のかたちがわからない。そのため詳しい尊名を知ることはできないが、両腕の配置や像容から考えて、智拳印(ちけんいん)を結ぶ大日如来と思われる。
構造は、頭部を一材で彫出しているようであるが、漆箔に覆われてよくわからない。面部には別材を矧ぐ。体躯は前後に二材を矧ぎ、さらに背面に左右に二材を矧いでいる。これによって、体躯の奥行を増している。脚部は横に一材を矧ぎ、両腰脇に各三角の材を矧ぐ。両腕は、それぞれ肩、肘先、手首で矧いでいる。
目や鼻、口を顔の中心に寄せ、かわいらしい穏やかな表情につくられる。また両膝にかかる衣の襞(ひだ)は、左右各四本ずっ刻まれ、型にはまった造形ではあるが、左右の均衡がきっちりと保たれている。
十二、木造如意輪観音菩薩坐像
南北朝時代
常世観音堂 大字常世中野字舟木原
像高 六三・七cm
一木造 彫眼 漆箔垂髪。天冠台を彫出し、正面と両側面に花形飾をつける。天衣、条帛をかける。一面六臂で、現状では持物として蓮華しか残っていないが、もとはそれぞれの手に宝珠、法輪、念珠などをとっていたものと思われる。首をやや右に傾け、右膝を立て両足裏を合わせて坐す。
構造は、木心を像前面にはずした一材で、頭体通して地付まで像前半の大部分を彫出し、背面より内刳を施し、背面には一材を矧ぐ。脚部は、横に一材を矧ぐ。その他各手はそれぞれ肩部や腋下に矧ぎ、右足部も別材を矧ぐなど細部に材を矧いでいる。手や右足、右腰脇などの各矧寄せがはずれ、漆箔も後補で、保存状態は良好とはいえない。