塙町の文化財 -047/105page
螺髪を細かく彫出し、左肩を覆い右腋下を通る衲衣と、右肩にかかる偏衫をつけて立つ。右手首より先を欠失しているが、左手が残っており、第一指(拇指(おやゆび))と第二指(人差指(ひとさしゆぴ))を捻じているのがわかる。これによってこの像は、来迎印(らいごういん)を結ぶ阿弥陀如来と考えられる。
構造は詳しくはわからないが、両足のつけ方がやや変っている。両足首より先をそれぞれ別に彫出し、像底部に矧ぎ付けている。普通、足首より甲の半ば頃まで体幹部材より彫り出し、両足先のみを矧ぐ。
肉髻部は椀形をなし、螺髪も細かく整っており、穏やかなお顔である。しかし体に奥行がなく、側面からみると偏平な印象を受ける。襟の線なども形式的な固さが目立つ。
この像は、もと干泥村の長泉寺の本尊であったという。長泉寺はすでに廃寺となり、この像は一時小田川村(矢祭町)法林寺に移されていたが、昭和二十六年に長泉寺の旧跡である現在地に一堂を建て安置したという。