ふるさとのむかし話-001/42age

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天狗のいけにえ

むかしむかし、五月もおわりに近く、目にしみいるような青葉の頃、湯の田の温泉に、母子二人の旅人がやってきました。子供は十一才になる男の子でした。たぶん、子供が病弱なので、この山奥のひなびた温泉に、湯治にやってきたのでしょう。母親はかいがいしく子供の世話をし、美しい母子の情愛は、ほかの湯治客からうらやまれるほどでした。そして、日一日と目にみえて丈夫になっていく子供の顔を、わがことのように喜びあいました。
ところがある日、湯が、突然パッタリと一滴も出なくなってしまいました。「何か変わりごとでもおきなければいいが!!。」、「恐ろしいことでもなければいいが!!。」と、みんな不安そうに声をひそめて、よるとさわると語りあいました。もちろん、こんなことは初めてのことだったからです。そして、だれいうとなく、「この湯が出なくな

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