ふるさとのむかし話-003/42age
目をさました母親のそばに、男の子の姿は見あたりませんでした。まるで煙のように消えていなくなっていました。「どなたか、わたしの子供をみかけませんでしたか。どなたか、わたしの子供をみかけませんでしたか…。」と、きちがいのようになって母親は、湯治客一人一人にたずねましたが、だれもだまって、首を横にふるばかりでした。
やがて、心配のあまりとうとう気がちがってしまった母親は、「じゅういち、じゅういち…。」と、ただつぶやくばかりでした。「十一才になる男の子」、このことばが、のろいのように頭にこびりついてはなれなかったのでしょう。そして、再び