ふるさとのむかし話-023/42age

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

こで別れなければならないさだめでした。そして、夕もやに消えるまで、ずっうっと見おくりました。使用人たちは、山の中ふくのさだめの場所に、娘の入った長持をおろすと、うしろもみずに、ほうほうのていで山をかけおりました。
そして、娘はうわさをきいてかけつけた、例の旅の行者から、「あなたは、観音さまのさずけ子であるいじょう、親の不心得のつみを受けるわけがない。心配しないで心静かに、これをよみ続けなさい。必ず、その功徳によって助かります。」と、わたされた一巻の観音経を、すべてあきらめていたときであり、わらをもつかむ思いで一心によみ続け、長持に入ってからも、おぼえた一節をくりかえしくりかえしとなえ続けました。
しかし、夜もしだいにふけ、三更、四更(今の午後十一時から午前三時ごろ)とたっていきましたが、別に変ったこともなくシーンと外は静まりかえっていました。娘は、おそるおそる中からそおっと長持のふたをあけると、外はすがすがしいほどの朝明けでした。「助かった。ありがたいありがたい。」と、観音さまに感しゃすると、

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は鮫川村教育委員会に帰属します。
鮫川村教育委員会の許諾を受けて福島県教育委員会が加工・掲載しています。