ふるさとのむかし話-032/42age

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ずなのに、おうぎおどりをしていた人は、けむりのように消えていなくなっていました。
そして、その日の午後、太郎蔵の息子の倉蔵が、外庭で仕事をしていると「ウーン、ウーン。」と、人のうなり声がどこからともなくきこえてきました。気味が悪いので、声のするほうをあちこちさがし、最後に、土蔵の方からきこえてくるようなので、中に入っていくと、一人の老人が苦しそうにうなっていました。倉蔵が、おそるおそる近よって、「あなたはどなたですか。」とたずねると、老人は、「わしは、この家の福の神だが、この家の主人に弓でうたれたので、この家にいることができなくなり、社川の福井(棚倉町)に移ることにした。別れにひとこといっておく、おまえがこまるようなときは、いつでもわしをたずねてきてくれ。太郎蔵には弓でうたれたが、お前には何もされていないのだから…。」というと、消えてしまいました。
それから間もなく、太郎蔵は福の神のたたりか人のいやがる病気になり、あれほどさかんだった家も、たずねてくる人もなくなり、すっかりぼつ落してしまいました。

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