体験学習の手引き -011/036page

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絵 ろ う そ く

 「絵ろうそくって?」という人が多いと思います。照明器具の発造した現代では、ろうそくも あまり見かけなくなりました。神棚や仏壇に上げるとか、お祭りや結婚式などで使われるぐらい でしょう。まして絵ろうそくを見たことのある人は少ないと思います。固くかためられた乳白色 のろうそくのまわりに、美しい草花の装飾のあるみごとな工芸品です。

 会津の伝統産業として漆器(しっき)は有名ですが、絵ろうそくは漆器の兄弟です。漆器はウルシの樹液 からとった漆(うるし)で塗り、ろうそくはウルシの実からとったろうで作ります。

1,絵ろうそくの歴史

 会津絵ろうそくの歴史は古く、後花園天皇の宝徳年間、時の会津藩主葦名盛信公が領内の農民 に漆樹の繁殖栽培を大いに奨励し、漆器の製造と共に漆樹の実より最上級の木ろうを採取し、ろ うそくを作らせたことにはじまります。本格的に作られるようになったのはその後で、蒲生氏 郷(がもううじさと)や保科正之(はしなまさゆき)が、会津の産業を発展させようとして、ウルシの木の栽培を保護奨励し、漆やろう がたくさん生産されるようになってからです。現在の会津漆器もここから始まっていますが、絵 ろうそくもそのころから作られるようになったと言われています。

 ろうそくは、ふだんみんなが使うものではありませんでした。江戸時代、一般庶民の照明には 松の根とかナタネ油などを燃やしていました。ろうそくはお祭りや婚礼など特別の時だけ使われ ました。

 まして、絵ろうそくなどは、神社やお寺に奉納(ほうのう)したり、高級な贈答(ぞうとう)品として使われたり、上級 の武士、身分の高い人、金持ちなどが持別の場合に使うだけだったようです。

 近代になって、ランプや電灯が出てくると、絵ろうそくはもちろん、ろうそくも特別の場合し か使われなくなり、産業として目立たなくなってきました。しかし、会津には、頑固(がんこ)な人々がい ました。あまりお金にならなくても、ずっと絵ろうそくを作り続けていたのです。美しいものを 作ることが、その人々の心の支えではなかったかと思います。そういう人々のおかげで、今、わ たくしたちは、この優雅な絵ろうそくを見ることができるのです。

2.絵ろうそく作り

 現在、この伝統のある美術工芸品続ろうそくを作れる人はごく少なくなってしまいました。わ ずか数人の手で、ひっそりと作り続けられています。

絵ろうそくの作り方(店によって多少のちがいがある。)
(1)芯(しん)巻き
 たんざく形の和紙(わし)を竹で作った芯巻き串(ぐし)に巻き、その上にイグサの芯を巻く。

(2)芯じめし(芯かため)
 とかし鍋(なべ)を炭火で暖め、ろうをとかし、芯の東を先の方からひたし芯か け串に1本ずつさす。

(3)ろう溶(と)かし
 ろうを溶かし、適温になったらろうふるいを通してろうぶねにあける。

 ※ 現在、ウルシの木が少なくなったので、ハゼろうが使われる。絵ろうそくでは、特に上質のろうが選ばれている。


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