体験学習の手引き -015/036page

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民 芸

1.縁起物(えんぎもの)

(1)初音(はつね)
 元日の早朝、まだ薄暗いころ、会津の子供たちは初音の音で目を覚まします。「ハーツネ、ハ ツネ、ハツネー。」「ピーイ(ホー)、ピョピョッ(ホケキョ)」と、それはどこか春を思わせる明るい音色(ねいろ)です。元 朝参りから帰る人々のざわめきと初音売りの呼び声に、心が浮き立つ思いがするのは雪国会津の 長い厳しい冬のせいでしようか。そして初音の音がどこか春を思わせるからでしょうか。初音は、 子供たちが元日の朝買ってもらい、正月の3ヵ日神棚に飾り、後でおさげしてからオモチャにし て遊ぶ小さな竹笛です。正月に初鴬(うぐいす)の声を聞くとよいことがあるとか、早く春がくるようにとの 願いをこめた縁起物といわれています。竹の笛の洞(どう)の部分をおや指とひとさし指でふさぐと「ホ ー」とやや低い昔が、ひとさし指を離すと「ケキョ」にあたる高い音が虫ます。今はあまり見ら れなくなったようですが、ひと昔前の子供たちはよく初音を吹いて遊んだものです。

 初音は直径1.5cmほどの細竹を5cmぐらいに切り取り、削って吹き口をつけただけの簡単なも ので、だれでも作れる素朴(そぼく)なオモチャです。作り方は次のとおりです。

2つできる
2つできる
まわりをけずる
まわりをけずる
このへんまで吹き口を割る
このへんまで
吹き口を割る
中央に穴をあける くさびをはさみしばる
中央に穴をあける
くさびをはさみしばる
もようをつける
もようをつける

(2)起き上がり小法師と風車(かざぐるま)
 1月10日は、会津若松の十日市(とおかいち)です。通りの両側にならんだにわか造りの露店(ろてん)から威勢のよい 呼び声が盛んに客を招きます。「サー、トオナャン買ってガンショ(買ってってください)」と たくさん並んだ商品の向こうから呼びかけます。その十日市で会津の人が必ず買うのが「起き上 がり小法師(オッキャガリコボシ)」と「風車」です。起き上がり小法師 はダルマのような形 の小さな張(は)り子(こ)人形です。底に粘土(ねんど)の重(おも)りがついていて、転んでもすぐ立ち上がるところから、 「粘り強さと健康」のシンボルとして縁起がよいといわれています。家族の人数より1個多く 買い、家族が増えて一家が繁栄しますようにと願うのがならわしとなっています。

 風車 は4本の細い割り竹を組んで、中央に小さなかごを作り、その周りに出た8本の竹に色 紙の羽をつけ、豆で芯(しん)を止めます。「まめ(元気)で、くるくる働けるように」との願いが込め られています。初音・起き上がり小法師・風車は、正月、神棚に飾られ一家の繁栄と家族みんな の健康・安全を折るもので、縁起物といわれています。


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