体験学習の手引き -016/036page
2.赤べこ(べこは会津弁で牛のこと、発音「アガペコ」)
会津では、古くから木型に和紙(わし)を張って作った張子(はりこ)人形が作られてきました。会津天神(てんじん)・だる ま・面などいろいろありましたが、全国に知られているのが赤べこです。赤べこを作る店は、何 軒もありますが、100年以上も作り続けている店もあります。古い店では、昔からのカッコのよ くない型をかたくなに守り続けているところもあり、それがかえって現代人の心を引きつけてい るようです。手作りの素朴(そぼく)なところが、赤べこの何ともいえない魅力(みりょく)です。
赤べこの作り方は、家によって多少の違いはありますが、次のようになっています。まず木 型(きがた)作りです。ホウノキをのみと小刀で削り、家に伝わった形に作り上げます。その上に和紙(わし)を何 枚も糊(のり)で張り乾操させます。乾き上がったら小刀で背割(せわ)りをします。背や腹の部分を切り開き、 木型を取り出します。それをもう一度張り合わせてから、貝がらを粉にしてニカワでねった胡粉(ごふん) で下塗(したぬ)りをします。まっ白になった下地に墨(すみ)で絵付(えつ)けをします。(絵付けを後からするところもあ ります)その上に、赤い染料などをニカワで溶かして、むらなく上塗(うわぬ)りをします。白模様(もよう)などを 書き加えて首つりをします。首がよく振れるように、首の後部に重(おも)りをつけ糸で吊ってできあが ります。
赤べこは、ゆったりしていて、ユーモラス。ゆっくり首を張るようすはどこか会津人に似てい ます。あまりカッコよくない、どこか鈍(にぷ)く、かたくなで、それでいて何となく人のよさそうな感 じ。素朴さ・実直・正義感・がんこさ・暖かさ。そんなものがどこからか、にじみ出てくるよう に見えます。赤べこが多くの人々に親しまれているのも、こんなところからではないでしょうか。
赤べこなどの民芸品は、蒲生氏郷(がもううじさと)のころ(安土桃山時代)、収入の少なかった武士の内職とし て薦められたとされていますが、はっきりした記録が残っているのは、江戸時代初めのものです。
初音などが縁起物(えんぎもの)として広まったのに対して、赤べこは疫病(えきびょう)の厄除(やくよ)けになるとか、虚空蔵(こくぞう)様の手 伝いをしたという伝説などと結びついて、会津の人々に広く親しまれてきました。