体験学習の手引き-011/033page

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絵ろうそく

 「絵ろうそくって?」という人が多いと思います。照明器具の発達した現代では、ろうそくもあまり見かけなくなりました。神棚や仏壇に上げるとか、お祭りや結婚式などで使われるぐらいでしょう。まして絵ろうそくを見たことのある人は少ないと思います。固くかためられた乳白色のろうそくのまわりに、美しい草花の装飾のあるみごとな工芸品です。
 会津の伝統産業として漆器は有名ですが、絵ろうそくは漆器の兄弟です。漆器はウルシの樹液からとった漆で塗り、ろうそくはウルシの実からとったろうで作ります。

1.絵ろうそくの歴史
 会津絵ろうそくの歴史は古く、後花園天皇の宝徳年間、時の会津藩主葦名盛信公が領内の農民に漆樹の繁殖栽培を大いに奨励し、漆器の製造と共に漆樹の実より最上級の木ろうを採取し、ろうそくを作らせたことにはじまります。本格的に作られるようになったのはその後で、蒲生氏郷や保科正之が、会津の産業を発展させようとして、ウルシの木の栽培を保護奨励し、漆やろうがたくさん生産されるようになってからです。現在の会津漆器もここから始まっていますが、絵ろうそくもそのころから作られるようになったと言われています。
 ろうそくは、ふだんみんなが使うものではありませんでした。江戸時代、一般庶民の照明には松の根とかナタネ油などを燃やしていました。ろうそくはお祭りや婚礼など特別の時だけ使われました。
 まして、絵ろうそくなどは、神社やお寺に奉納したり、高級な贈答品として使われたり、上級の武士、身分の高い人、金持ちなどが特別の場合に使うだけだったようです。
 近代になって、ランプや電灯が出てくると、絵ろうそくはもちろん、ろうそくも特別の場合しか使われなくなり、産業として目立たなくなってきました。しかし、会津には、頑固な人々がいました。あまりお金にならなくても、ずっと絵ろうそくを作り続けていたのです。美しいものを作ることが、その人々の心の支えではなかったかと思います。そういう人々のおかげで、今、わたくしたちは、この優雅な絵ろうそくを見ることができるのです。

2.絵ろうそく作り
 現在、この伝統のある美術工芸品絵ろうそくを作れる人はごく少なくなってしまいました。わずか数人の手で、ひっそりと作り続けられています。
絵ろうそくの作り方(店によって多少のちがいがある。)
(1)芯巻き たんざく形の和紙を竹で作った芯巻き串に巻き、その上にイグサの芯を巻く。
(2)芯じめし(芯かため) とかし鍋を炭火で暖め、ろうをとかし、芯の束を先の方からひたし芯かけ串に1本ずつさす。
(3)ろう溶かし ろうを溶かし、適温になったらろうふるいを通してろうぶねにあける。
 ※現在、ウルシの木が少なくなったので、ハゼろうが使われる。絵ろうそくでは、特に上質のろうが選ばれている。

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