体験学習の手引き-015/033page

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民芸
1.縁起物(えんぎもの)
(1)初音
 元日の早朝、まだ薄暗いころ、会津の子供たちは初音の音で目を覚まします。「ハーツネ、ハツネ、ハツネー。」「ピーイ(ホー)・ピョピョッ(ホケキョ)」と、それはどこか春を思わせる明るい音色(ねいろ)です。元朝参りから帰る人々のざわめきと初音売りの呼び声に、心が浮き立つ思いがするのは雪国会津の長い厳しい冬のせいでしょうか。そして初音の音がどこか春を思わせるからでしょうか。初音は、子供たちが元日の朝買ってもらい、正月の3ヵ日神棚に飾り、後でおさげしてからオモチャにして遊ぶ小さな竹笛です。正月に初鴬(うぐいす)の声を聞くとよいことがあるとか、早く春がくるようにとの願いをこめた縁起物といわれています。竹の笛の胴の部分をおや指とひとさし指でふさぐと「ホー」とやや低い音が、ひとさし指を離すと「ケキョ」にあたる高い音が出ます。今はあまり見られなくなったようですが、ひと昔前の子供たちはよく初音を吹いて遊んだものです。
 初音は直径1.5pほどの細竹を5cmぐらいに切り取り、削って吹き口をつけただけの簡単なもので、だれでも作れる素朴なオモチャです。作り方は次のとおりです。
(1)初音

(2)起き上がり小法師と風車
 1月10日は、会津若松の十日市です。通りの両側にならんだにわか造りの露店から威勢のよい呼び声が盛んに客を招きます。「サー、トオチャン買ってガンショ(買ってってください)」とたくさん並んだ商品の向こうから呼びかけます。その十日市で会津の人が必ず買うのが「起き上がり小法師(オッキャガリコボシ)」と「風車」です。起き上がり小法師はダルマのような形の小さな張り子人形です。底に粘土の重りがついていて、転んでもすぐ立ち上がろところがら、「粘り強さと健康」のシンボルとして縁起がよいといわれています。家族の人数より1個多く買い、家族が増えて一家が繁栄しますようにと願うのがならわしとなっています。
 風車は4本の細い割り竹を組んで、中央に小さなかごを作り、その周りに出た8本の竹に色紙の羽をつけ、豆で芯を止めます。「まめ(元気)で、くるくる働けるように」との願いが込められています。初音・起き上がり小法師・風車は、正月、神棚に飾られ一家の繁栄と家族みんなの健康・安全を祈るもので、縁起物といわれています。


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