すばらしい先輩たち 会津人のほこり(第1集) -010/197page
津の冷(つめ)たい、おいしい水がのみたかった「埋(う)め立てられた海岸ぞいにつくられた横浜(よこはま)の水は、かし子ののどをうるおすことができなかったのです。
しかし、養父(ようふ)、大川甚兵衛(おおかわじんペえ)の貿易(ぼうえき)の仕事が順調(じゅんちょう)なうちは、豊かな暮らしができました。やがて、養父の主人である山城屋(やましろや)が、ある事件にまきこまれて破産(はさん)したため、その影響(えいきょう)をうけた養父の仕事もだんだんうまくいかなくなりました。
一家は、横浜をひきはらって、東京にうつりました。かし子も『キダーさんの学枚』 をやめました。
はじめのうち、少し残っていた財産(ざいさん)も、やがて少なくなっていきます。せまい家の中でひっそりと暮らしていると、生活が苦しくなるにつれて、ふだんは何とも思わなかったおたがいの欠点(けってん)も、はっきりわかるようになり、おたがいに気にかかってきます。だんだん、神経(しんけい)もいらいらしてきます。
「まったく、しぶとい、強情(ごうじょう)っばりだよ。」