すばらしい先輩たち 会津人のほこり(第1集) -021/197page
読みとることは、むずかしいことではなかったでしょう。しかし、それをどうあらわしたら、日本語としてわかってもらえるか、こうなると、今までの文語体の文章ではとても表現できません。
いろいろと苦心の未(すえ)に生まれたのが、この 『小公子』 の語りかける文体だったのです。母から子へ語りかける 『小公子』 の文章は、母から子へと伝えられるやさしい愛情の表現でした。
『ー かあさま、とうさまはもうよくなって。
とセドリックが言いましたら、つかまったおっかさんの腕がふるえましたから、チヂレ毛の頭をあげて、おっかさんのお顔をみると、何だか泣きたいような心特ちがしてきました。それからまた、
ー かあさま、おとうさまはもうよくおなんなすったの。
と同じことを言ってみると、どういうわけか、急におっかさんのくびに両手