すばらしい先輩たち 会津人のほこり(第1集) -122/197page

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朝、五郎はおばがひきとめるのも聞かず、昨夜からの大雨の中を若松城下のわが家へ帰るため、下男(げなん)の留吉(とめきち)と一緒に面川沢を出ました。手にはきのう拾い集めたきのこや栗をつめたかごを下げて、どろんこの坂道を急ぎました。

 堤沢村(つつみざわむら)の北口にさしかかったとき、城下から命からがら逃げてきた難民に出会いました。ずぶぬれの難民(なんみん)は道路いっぱいにあふれて、すべて南の方へと向い、若松城下の方へ行くのは五郎と留吉だけでした。

 「どちらさまの小だんなかは存じませんが、城下はもう火の海です。それに敵兵がいっぱいで、お城のそばにも近寄れません。引き返した方がよいですよ。」

と声をかける人もありました。若松の方を見ると、もうもうとした黒煙(くろけりむり)につつまれてお城は見えず、わが家のあたりには真(ま)っ赤(か)な火柱(ひばしら)があがっていました。

 「母上、母上。」とさけびながらなおも行こうとしましたが、出会う人ごとに


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