すばらしい先輩たち 会津人のほこり(第1集) -131/197page
一家をおそいました。斗南藩(となみはん)が米を買い入れようと頼んだ貿易商人に藩の金を持ち逃げされてしまいました。米の買い入れの責任者であった太一郎は、藩の責任を一身に背負(せお)って捕(とら)われの身となり、東京に護送されてしまったのです。
働き手を失った柴一家は、開拓どころではなくなりました。このさいはての地で、迫(せま)りくる厳(さび)しい冬をどう生きぬくかが問題でした。とりあえず来年の春までの仮住(かりず)まいとして、町の有力者の世話で、空屋(あきや)を借りることにしました。その家は、もうながらく人が住むこともなく、物置きにでも使っていたらしく、ひどく荒れはてていました。床(ゆか)はところどころ抜け落ち、たたみは一枚もありませんでした。戸坂は破れて大きな穴があき、障子(しょうじ)も骨ばかりとなっていました。
「うむ…‥……これはたいへんじゃ…………。」
さすがの佐多蔵(さたぞう)も、うめくようにつぶやきました。あばら屋の中を見まわし