すばらしい先輩たち 会津人のほこり(第1集) -135/197page
このありさまを見た佐多蔵(さたぞう)は、
「おまえ、武士の子であることを忘れたのか。」
と顔をまっ赤にして怒りました。
「戦場では、食べものがなければ、犬でも猫(ねこ)でもなんでも食べて戦うものだ ぞ…… 。」
「………………………」
「ここは戦場と思え。会津のはじをそそぐまでは戦場だぞ…。」
いつもの静かな調子とはうって変って、語気(ごき)あらく五郎を叱りました。
あまりの父のはげしさに、五郎はおどろきふるえて、ロの中にふくんだ犬肉を目をつむって飲み下しましたが、胸につかえて苦しみました。犬の肉の食事は20日間も続きました。
春になると、どうしたことか、五郎の髪(かみ)の毛が扱けはじめ、ついに坊主(ぼうず)頭の