すばらしい先輩たち 会津人のほこり(第1集) -137/197page

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るだけでした。ここの家は、田名部(たなぶ)にもましてひどいものでした。

 春もおそくなったある日の夕方、東京に勉強のため残っていた五三郎(ごさぷろう)兄が、突然落(おとし)の沢にやってきました。太一郎兄が、藩の罪を負って牢屋(ろうや)につながれていることを知って、父を助けるためにやって来たということです。

 五三郎の応援を得て佐多蔵(さたぞう)も大よろこびし、カをあわせて開こんにはげむことになりました。五三郎は、家がせまいので、百二十米ほどはなれた小高い丘(おか)の上にある 「呑香稲荷(どんこういなり)」 とよばれるお堂(どう)に寝起(ねお)きすることにしました。ここはふとん類は全くなく、炉(ろ)もなく俵(たわら)やむしろにくるまって寝るだけでした。五三郎は、五郎が学校にも行かず、本も全然開かないようすをみておどろき、また心配しました。いくらかでも勉強をはじめるために、五郎も夜はお堂にきて五三郎兄と一緒に寝ることにしました。

 やがて五郎は、五三郎兄のはからいで、田名部にある藩の学校、「日新館(にっしんかん)」 に


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