すばらしい先輩たち 会津人のほこり(第1集) -140/197page
それでも、五郎にとって日新館での勉強はたのしいものでした、今までのおくれをとりもどそうと、ひたむきに勉強しました。希望がわいてきました。そのやさき、世話になっていた小林家の都合(つごう)で、五郎は勉学を中断してまた落(おとし)の沢の一軒家に帰るはめになってしまいました。真冬の寒風(かんぷう)が下げてある入口のむしろをあおって吹き込んでくる家の中での、乞食(こじき)のような生活にまたもどりました。父も兄も兄嫁(あによめ)も五郎も、寒さに身をふるわせながら縄(なわ)をなう日が続きました。五郎は心の中からこみあげてくるくやしさをどうすることもできませんでした。 (なぜこれほどまでの仕打(しう)ちにあわねばならないのでしよう。こんなことなら、母上や姉妹(しまい)たちと一緒に自害していればよかった)とも思いました。炉(ろ)の火を見っめていると、急に火の海につつまれた若松城下のことが目にうかびました。白い着物に身をつつんで自害した母のことが思い出されて、涙がほほを流れました。誰も、もくもくと縄をなうだけでした。