すばらしい先輩たち 会津人のほこり(第1集) -142/197page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

 青森に出て給仕として働いているうちに、五郎の胸の中にまた夢がふくらんでいきました。なんとか東京に出たいと思うようになりました。機会(きかい)を得て、野田大参事に胸のうちをうちあけてみました。はじめはとりあわなかった野田大参事は、ねばり強くなんでもやりぬく五郎の人柄(ひとがら)を見抜いて、真剣に相談にのってくれるようになりました。

 明治五年(五郎14歳)の六月、野田豁道(のだひろみち)のはからいでいよいよ東京に出ることになりました。土地調査にきた大蔵省の役人の一行に、ついて行くことになったのです。途中、盛岡(もりおか)、仙台、福島などをへて東京に着いたのは、八月二十一日でした。青森を出発してから三ヶ月近くもかかっていました。 (やっと東京に着いた)という安心感と喜びと、これからどうするかという不安とが入りまじった気持ちで東京の土を踏みしめていました。

 この朝、五郎は、東京の入口、千住(せんじゅ)の街路を歩いていました。そのとき、前


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は会津若松市教育委員会に帰属します。
会津若松市教育委員会の許諾を受けて福島県教育委員会が加工・掲載しています。