すばらしい先輩たち 会津人のほこり(第1集) -144/197page

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「はあ………青森を出まして、今朝ようやくここまで着きました。」

野田は事情があって、青森県庁の役人をやめ、五郎より一と月あとに青森を出たが、一と月前に東京に着いていたのでした。

「こんな所で会うのも何かの縁(えん)じゃ、いつか私の家に来てみなさい。」

野田は五郎に住所を教えると、人カ車の一行を追って立ち去りました。

 東京には、親戚(しんせき)や知人がたくさんいるから、といって青森を出た五郎でしたが、来てみるとなんのあてもありませんでした。会うことを楽しみにしてきた四郎兄は、一ヵ月前に東京を去っていました。太一郎兄も出獄(しゆつごく)を許されたのを機会に、下北(しもきた)へ行っていることがわかりました。五郎は全身から力が抜けたようにがっかりしました。

 上京後、最初にころがり込んだのは、青森から同行した土地調査官の市川正寧(いちかわまさやす)の家でした。次の日から、五郎は、世話をしてくれる人をさがして、広い東


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