すばらしい先輩たち 会津人のほこり(第1集) -155/197page
れたのは、母と祖父(そふ)だった。それに、九っ年上の兄が父の代りになってめんどうをみてくれた。とりわけ母は、子どもの教育に熱心だった。毎日、タ食がすむと子どもたちに向って言った。
「さあさあ、お前たちはこちらに来ておすわりなさい。お母さんが本を読んであげましょう。健次郎、台所に行って下女(げじょ)たちにも、こちらに来て、一緒(いっしょ)に聞くように言って来ておくれ。」
毎晩(まいばん)こうして、家族を集めて二時間ぐらい本を読んで聞かせていた。その本は戦国時代の織田信長(おだのぶなが)・豊臣秀吉(とよとみひでよし)の伝記や、中国の昔話の「水滸伝(すいこでん)」などであった。こんな影響(えいきょう)を受けて、健次郎は、ひまさえあれば本を読むほど、学問が好きになっていた。