すばらしい先輩たち 会津人のほこり(第1集) -169/197page

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る。九九の呼び方さえわからなかった。というのは、日新館にいるころは、算数やそろばんは商人が習うもので、武士の学ぶものではない。算数やそろばんの勉強は、身分の低い商人たちのすることだと思っている人が多かった。健次郎もその一人だった。日新館でも、少しは教えていたが、学ぶものはほとんどいなかった。

 しかし、会津を離れた健次郎は、多くの人と出会い、多くの新しい知識を学んでいた。そして、ものを考える上で、算数はたいへん大切な学問であることを知り、今までの考えを改(あらた)めて、本気で算数の勉強をする気になったのである。沼間塾(ぬまじゅく)の算数は、せいぜい二桁(けた)の割り算程度のやさしいものだったが、はじめて学ぶ健次郎にとっては、非常にむずかしく感じられた。同時に、何か目の前が開けてくるように感じた。毎日、ニニ(にに)が四、二三(にさん)が六とくりかえし暗唱(あんしょう)した。

 やがて、この程度の勉強では、健次郎は満足できなくなった。このころ、も


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